カンジダから寄せられた喜びの声!「ジメジメした女性の膣内は繁殖に最適!超気持ちいい!」
カンジダ:夕べ眠れずに〜♪ 掻いていたんだろ〜♪ カンジダの痒みが我慢できなくて〜♪
ふー、ようやく着いたか。ここが膣のかゆい女性患者が列をなしているという例の婦人科クリニックか…。さ〜てどの娘に感染しちゃおうかな〜っと!
雅治(クリニック院長):それ浜田省吾の名曲「もうひとつの土曜日」じゃないか? 黒いスーツに身を包んだJASRACの怖い人たちがクリニックに押しかけてくる前に止めてくれないかな。
奈々(看護師):また変なキャラ設定の菌が登場したのね。膣内にカビの一種であるカンジダ菌が繁殖して、掻き毟りたくなるような強いかゆみ、排尿痛などの症状が現れる「膣カンジダ」って、女性の5人に1人が悩まされた経験があるってきいたんですけど、この数字って凄い高いですよね?
そうなんだ。僕たち人間の体には生まれつき数百種類の菌が存在していて、これらを「常在菌」と呼んでいる。カンジダ菌(真菌)もこの常在菌の一つで、健康であっても何割かの人の皮膚や消化管、女性なら膣内にも存在しているんだ。
普段は体に悪い害は及ぼさないんだけど、ストレス、過労、睡眠不足、生理、抗生物質の服用などで体の免疫力が低下すると活動が活発になり、女性ではデリケートゾーンの強いかゆみ、排尿時の痛み・灼熱感、性交痛などの症状が出てくるんだ。
似たような症状が現れる性病は他にもあるけど、膣カンジダの場合は、"カッテージチーズ状"とか"ヨーグルト状"、あるいは"酒粕(さけかす)"のようなボロボロとした白いオリモノが出ることが多いから、視覚的にはわかりやすいといえるね。
膣カンジダはオリモノの検査で菌の存在が確認されただけでは、膣カンジダとは診断されないんだよ。オリモノの症状、デリケートゾーンの炎症、そしてかゆみがあって初めて婦人科での治療の対象となるんだ。
この症状の中で女性にとって一番厄介なのは、デリケートゾーンの激しいかゆみですよね。人前で掻くのは憚れる場所ですし、掻いたところで症状が治まることはなく、むしろ引っ掻き傷が原因で新たな炎症を起しちゃいそうですよね。
過労、睡眠不足、ストレスなどが引き金になるとのことですが、病棟勤務のナースは夜勤が必須ですから危ないですよね。今思い返せば、総合病院で働いていたころは膣カンジダに悩まされていた先輩ナースは結構いたのかも…。
毎日涼しい顔でテキパキと仕事をこなしていても、休み時間は病院のトイレに駆け込んでパンストを脱いで、アソコを掻きまくっていたんですかね!
そうかもしれないね。現代はストレス社会だから、僕たちの想像以上に膣カンジダの女性がいてもおかしくない。女性のカンジダ菌の保有率は、妊婦さんで約30%、妊娠していない女性で約15%となっており、そのうち治療が必要となる例は、それそれ約30%とされているんだ。
分娩が近づいている妊婦さんの腟内に多量のカンジダ菌が確認された場合は、分娩時の赤ちゃんにカンジダ菌が感染(産道感染)するのを予防する意味で治療が必要になる。なかでも早産未熟児が予想される場合は注意して治療を行うことになる。
カンジダ菌は高温多湿の環境で繁殖する性質がある。女性のデリケートゾーンは夏は暑さでムレやすいし、冬は寒いから厚着をして通気性が悪くなりがちだからムレてしまう。つまり本人が意識して、デリケートゾーンの清潔を意識していないと、どうしてもカンジダ菌が繁殖してしまうんだ。
グフフ。若い女の不潔なデリケートゾーンは、俺たちカンジダにとってはまさに天国! 栄養抜群のオリモノ、経血、汗が豊富だからいつでもお腹いっぱいだし、オリモノシートや通気性の悪い下着、デニムなどでジメジメしている環境も繁殖にも最適だぜ〜。カンジダだけにいい感じだ(カンジダ)、なんちって。ヒャッハー!!
……。膣カンジダの症状はトリコモナス膣炎や細菌性腟症の症状と似ているため、外陰部や膣内の観察だけではなく、膣分泌液を採取して顕微鏡で調べ、カンジダ菌の存在を確認する必要があるんだよ。
膣カンジダの治療は、まず婦人科で膣内をきれいに洗浄した後、エンペシド膣錠、フロリード膣坐剤、オキナゾール膣錠といった抗菌薬を膣の奥に挿入するんだ。
通常はこれに加えてエンペシドクリーム、フロリードDクリーム、オキナゾールクリームといった軟膏・クリームも使用するよ。
これらの治療を行えば90%前後の人は1週間から2週間で症状は治まるから、それほど心配する必要はないよ。
グフフ…甘いな、先生さんよ。俺たちカンジダにもタフな同士がいてだな。膣錠やクリームで1回はノックアウトされても、カムバック(再発)して、デリケートゾーンで暴れまくるんだ。
再発の度に婦人科を受診して、薬を処方してもらうのは面倒くさいからと、自己判断で見当違いの市販薬を選んで使用する若いお嬢ちゃんが多いから、いつまでたっても俺たちとの縁は切れないって訳だ。まったく有難いことだぜ。サンキュー、グラッチェ、謝謝。
本当にそうかしら? 確かに再発した膣カンジダに悩まされる若い女性は少なくないわ。でも最近は再発の膣カンジダ専門のOTC(一般用医薬品)が薬局で買えるから、自己治療でもキチンとかゆみを治せるようになっているのよ。
えーと、例えば…(メイクポーチをゴソゴソとまさぐる)、あった!これはフェミニーナ膣カンジダ錠(小林製薬)よ。1日1回、膣内に小さな膣錠を入れるだけだけでOKだから、簡単ね。
ほかにもほら!オキナゾールL100(田辺三菱製薬)、こっちはメディトリート(大正製薬)、まだまだ!これはメンソレータムフレディCC膣錠(ロート製薬)、そして最後ははエンペシドL(佐藤製薬)! これだけあればどの薬局でも最低一つは見つかるんじゃないかしら。
ど、どうして…そんな秘密情報を知っている!?もしかして俺たち性病界の住人…もとい、菌やウイルスの中に裏切り者がいるということなのか? それとも膣内の会議室に人間どもが仕掛けた盗聴器があるということのか?
秘密情報って…膣カンジダの再発治療薬が市販されるようになって何年経ってると思ってるんだ? 特にエンペシドL(佐藤製薬)の広告は動画でも頻繁に流してるぞ。
それはさておき、これらの薬を購入する際に絶対に守らなければならない決まりがある。それはこれらの薬を購入できるのは、"過去に医師から膣カンジダの診断・治療を受けた人が再発したケース"に限定されるということなんだ。
さっきも同じ話をしたけど、膣トリコモナス症や接触性皮膚炎、皮膚掻痒症なども膣カンジダに似た症状を示すので、自己判断で膣カンジダと勘違いして薬を使用し、症状を悪化させてしまうことを防ぐためなんだよ。
また、生理中にオキナゾールL100やエンペシドLなどの膣錠タイプの市販薬は使用できないんだよ。というのも、生理中は経血で膣錠が洗い流されてしまうから、薬剤の効果が薄れてしまうからなんだ。
ウッ…!しかし、まだ俺たちには最後の砦がある。それはズバリ、男だ!愚かな人間どもは、カンジダは女だけが感染すると思っているようだが、実は男も感染する。通常、セックスを通じてペニスについたカンジダ菌はシャワー等で自然に洗い流される。
しか〜し、ここに盲点がある。ズル剥けペニスの成人男子は問題ないが、仮性包茎や真性包茎の男はペニスの亀頭が包皮でカバーされているから、俺たちカンジダ菌は流されないで住み着いてしまうのさ! 包皮の内側は女のデリケートゾーンと同様に湿っているから、ぬくぬくと繁殖できるんだぜ、グフフ。
男性のカンジダはどんなが症状が出るかって? 亀頭に炎症が起きて、亀頭やカリ周辺のかゆみ、ただれ、水ぶくれ、違和感などの症状が現れるぞ。まれに尿道炎を起こして、排尿痛を訴える男もいる。
俺は桐谷美玲や石原さとみのような若いネーちゃんがタイプなんだが、膣坐薬・クリームによる「カンジダ排斥運動」が盛んになった今となっては贅沢はいってられない。これからは包茎の男性を狙い撃ちだ!そろそろ作戦会議の時間だがら、帰るぞ!あばよ!
なんだか最後の最後になって、私たち人間も見落としがちな有益な情報を残していった気がするんですが…。少数とはいえ男性もカンジダ菌の感染リスクがあるとなれば、婦人科で膣カンジダと診断された女性が治療を受ける際は、男性パートナーにも検査を受けてもらわないとまずいことになりますよね?
うん。仮に男性も感染している場合、女性と並行して治療を受けないと、女性の治療後に再び感染してしまうリスクがある。クラミジアの時にも話したけど、性病はこの「ピンポン感染」が怖いからね。
通常、カンジダ菌は膣内の殺菌力によって繁殖が抑えられているんだけど、ストレス、疲労、抗生物質の服用などが原因で体の免疫力が低下すると大繁殖を起こしてしまう。すると膣カンジダが再発して、膣や外陰部のかゆみやおりものの異常などの症状に再び悩まされることになってしまう。
膣カンジダの再発を予防するためには、栄養バランスのとれた食生活と十分な睡眠が欠かせないよ。またカンジダ菌はムレた場所で繁殖しやすいから、下着は通気性の良いものを選ぶようにして、夏場はこまめに着替えるように心がけるといいよ。
デリケートゾーンを清潔に保ちたいからといって、石鹸や入浴剤を使いすぎると皮膚に備わっているバリア機能が低下してしまい、カンジダ菌がかえって感染しやすくなる恐れがあるんだ。
カンジダ菌は腸内にも存在しているから、トイレで前方に向かって拭く(肛門→膣の順番)人は感染リスクが高くなってしまう。トイレでは後方に向かって拭く(膣→肛門の順番)のが正しい作法だよ。
さーて、今日の診察はここらへんで終わりにしよう。奈々ちゃん、この後は久しぶりにカラオケでもどう? さっきからさ、「夕べ眠れずに〜♪ 掻いていたんだろ〜♪ カンジダの痒みが我慢できなくて〜♪」の歌詞が頭から離れないんだよ。
日本性感染症学会などの関連学会が「膣カンジダ啓発キャンペーン」を企画したら、公式ソングとして通用するんじゃないか?
…。きょ、今日は実家の母が久しぶりに家に来ることになっているので、私はこの辺で失礼します。ではまた明日!
あれ、何か気に障ることを言ってしまったかな…。なお、妊娠中に腟カンジダを発症しても、胎児への影響はほとんどありません。しかし、出産時に産道を介して赤ちゃんにカンジダ菌に感染するリスクはあります。
カンジダ菌に感染した赤ちゃんは口に白いカビ(鵞口瘡:がこうそう)が発生したり、皮膚がかぶれる(カンジダ皮膚炎)などの症状がでることがあります。
妊娠中の女性は、妊娠をしていない女性に比べて腟カンジダを発症・再発しやすい傾向にあるので、婦人科で医師の診療を受け、出産までに完治させるようにしましょう。