トリコモナスがあなたに贈る!世界最上級のオリモノの悪臭と我慢できない膣のかゆみ

 

雅治(クリニック院長):ふぅ〜、連休明けはやっぱり患者さんが多いね。午前中の診察で疲れちゃったよ。さ〜て、そろそろ昼ご飯にでも…ん?何か臭いぞ、ゲホッ、ゲホッ…!もしやこの悪臭は…。

 

トリコモナス:ククク…このかすかに漂う高貴な香りを嗅ぎ分けるとは、さすが婦人科の医師よのう。おっと、そこのお嬢さん、名乗らずに失礼した。私の名前はトリコモナス、それとも"性病界のオードパルファム"と言ったほうがわかりやすいかな?

 

奈々(看護師):ゲホゲホ…どういう嗅覚の持ち主ならこの悪臭をクロエの香水と同列にできるのかしら? 膣や子宮頸管、尿路などに感染して、我慢できない膣のかゆみ、腫れや刺激感、悪臭を伴う黄緑色の泡立ったオリモノの増加などの症状で多くの女性を悩ませているのはあなたなのね。

膣トリコモナス原虫(ゾウリムシのようなもの)は、肉眼ではわからない0.1ミリ程度の大きさと聞いていたけど、あなたはどう見ても1メートル80センチ以上はあるわよね?

 

サイトの表現上の演出に一々目くじらを立てていたら、目じりの小じわが増えちゃうぞ、お嬢さん。君たちが住んでいる日本では、膣トリコモナス症の患者数は減少傾向にある。我々にとっては非常に嘆かわしい限りだ!

そこでクラミジア、淋病に続く勢力を目指すべく、偵察要員として私がこのクリニックに送り込まれたわけだ。午前の待合室を見ていたが、我々の宿主候補となる女性患者がたくさんいて安心した。隙あらば、お嬢さんにも感染しちゃうぞ、ククク。

 

他の性病は10代後半から20代の感染者数が多いけど、トリコモナスは中高年など幅広い年齢層に感染が見られるのも大きな特徴なんだ。また、このトリコモナスは女性だけが感染するイメージが強いかもしれないけど、セックスパートナーである男性の尿路や前立腺などにも侵入するんだ。

しかも、女性は上記のような不快な症状が現れるから感染に気が付きやすいけど、男性は自覚症状に乏しいため、感染に気付かないことも少なくない。つまり、膣トリコモナス症が完治した女性が、そのパートナーとセックスをすると再発する可能性があるということなんだ。

感染頻度は稀だけど、トイレの便器や浴槽を通じた感染経路も報告されており、セックスの経験のない女性や子供が感染した例もあるんだ。

 

ウム。しっかりと我々のリサーチをしているようだな。じゃあ、ついでに訊くが他の性病の感染に比べて、悪臭…じゃなかった高貴な香りがするオリモノが大量に出るのは何故だかわかるか? 諸説はあるが、一番有力とされる学説とやらを説明してもらうか。

 

その質問には女性の私が答えてあげるわ。私たちの膣内には乳酸棹菌という善玉菌がいて、その働きによって弱酸性に保たれているから、大腸菌やカンジダ、トリコモナスなどの侵入や繁殖を抑えているの。

この乳酸棹菌が元気に活動するためにはグリコーゲンと呼ばれる栄養が欠かせないんだけど、トリコモナスもこのグリコーゲンを栄養素としてるから、乳酸棹菌の分が不足しちゃうの。

その結果、善玉菌の乳酸棹菌が減少する→膣内を適正な酸性度(pH)に保てなくなる→トリコモナスや悪臭の原因となる嫌気性菌や大腸菌、球菌などが増殖してしまうのよ。

 

ほほう、お嬢ちゃんは可愛いだけでなく、頭脳もなかなか明晰なようだ。気に入った。是非感染して、最高級の膣のかゆみをプレゼントしてあげたいものだ。ククク。

 

奈々ちゃん、よく勉強してるね(…いかん、このままでは僕が解説する必要性がなくなってしまう)。 ゴホン。…えーと、トリコモナスの感染の有無を調べる検査は、新鮮な膣分泌液(オリモノ)を採取して顕微鏡で見るだけでだいたいわかる。トリコモナス原虫がウヨウヨと動き回っているのが確認できるからね。

膣トリコモナス症の治療は、膣の中をきれいに洗浄してから、メトロニダゾール(フラジール内服錠250mg、フラジール膣錠250mg)系の経口薬や膣剤を10日間使用する。これでほとんどの症例は完治するんだ。

膣に自分で入れる錠剤タイプのフラジールは、膣内で錠剤が「シュワシュワシュワッ…」と空気の泡のように弾けるときもあるけれど、挿入の仕方が間違っているとか、効き目が落ちるとかそういう心配はないよ。

フラジールで治療を終えた後でも、しぶとく生き残った僅かな原虫が経血中で繁殖することが稀にあるので、確実を期すなら次の月経後にもう一度婦人科を受診して、原虫が完全に消滅したことを確認したほうが安心だね。

 

これだけ対策が進んでいたとは…。ん?さっきから足の裏がモゾモゾするな、何か踏んだようだ。アッ!こ、これはフラジール膣錠250mg。いつのまに!おのれ、謀ったな!ウォオオ、身体が溶けてゆく!!!。我々トリコモナスは…永・遠・に…不…滅…シュワシュワシュワ。

 

さすが先生。役者が一枚も二枚も上でしたね。このままデリケートゾーンの不快な症状に悩まされる女性が減ればいいんですけど。今こうしている間にも仕事中にアソコが痒くてたまらない女性は大勢いるはず。

じゃあ、今から診察室を消毒・消臭しますので、それが終わったら少し遅めの昼食に行きましょう!