セックスから72時間以内にアフターピルを飲めば、避妊の成功率は約80%あります
奈々(看護師):さっきの患者さん本当にホッとして帰られましたね。彼氏との一泊旅行でエッチしたら、コンドームが破れていて顔面蒼白になって来院されましたが、アフターピルの処方を受けてようやく生気を取り戻したようですね。
恐らく多くのカップルが、セックスを終えて額にうっすらと滲んだ汗を手で拭いながら「ねぇ、今日のエッチ、すっごく良かったよ…」と何気なく使用済みのコンドームを処理しようと思った瞬間、コンドームに空いた穴からトロリと滴る精液に思わず「嘘でしょ…!?」と一気にセックスの余韻が醒めた経験をお持ちなのではないでしょうか?
あるいはお酒の勢いに任せて、鼻息荒くコンドームなしのセックスをしたものの、翌朝、我に返って自分の愚かな行動に後悔の念に駆られてしまう…なんてシーンも想像できます。
普段は信心のかけらも持ち合わせていないのに、こんな時だけ「どうか生理が来ますよーにお願いします!!!」と神仏にすがっても、望まない妊娠を避けることはできませんよね。残された手段はただ一つです。そう、産婦人科をダッシュで受診してアフターピル(緊急避妊薬)を処方してもらうことです。
雅治(クリニック院長):うん。アフターピルは含まれるホルモンの働きで、排卵を抑えたり遅らせたり、子宮内膜に受精卵が着床するのを妨げることで妊娠を回避することができるんだ。セックスの翌朝に飲むことが多いので、モーニングアフターピルと呼ばれることもあるんだけど、服用は早ければ早いほど避妊効果は高いよ。
残念ながらアフターピルは医師の処方箋なしにドラッグストア等で購入することはできないんだ。海外の薬の通販サイトという「抜け道」も存在するけど、販売元が怪しいところも多く、偽薬を掴まされるリスクもあるためオススメはしない。アフターピルを処方してもらうにはきちんと産婦人科を受診しよう。
そして医師による問診、場合によっては超音波検査や内診で子宮と卵巣の状態を確認してもらい、問題がなければそこで初めて、黄体ホルモン(LNG:レボノルゲストレル)を主成分とした錠剤を処方してもらえるよ。アフターピルの処方料金は保険の効かない「自由診療」扱いになるので、医療機関によって異なるんだ。だいたいアフターピルと低用量ピルのワンクール分がセットになって約15,000円の費用がかかるという医療機関が多いね。
気になる避妊成功率ですが、国内で処方されているノルレボ錠(写真参照)とプラノバールはセックス後の3日以内(72時間以内)に飲むことで、約80%の確率で妊娠を回避することができます。セックスから12時間以内の服用ならばさらに成功率は高く、いずれも95%以上の避妊率とされているんですよ。
妊娠を無事に回避できたかどうかは、月経が再来があるかないかでわかります。月経が再来する期間はアフターピルを飲んだタイミングと月経のリズムの関係によって違いが出るため、早くて2〜3日、遅くて3週間前後と随分変わってくるんです。数日経過したからといって「ヤバい!妊娠したかも…」と慌てずに待ちましょう。
まれにアフターピルを服用後に頭痛や吐き気などを訴える方もいますが、いずれも一過性ですので心配はいらないんですよ。含まれているホルモンの量はごく微量ですので、薬の作用は3日程度でゼロになります。将来の妊娠に悪影響を及ぼすということは全くないので、安心して飲んでください。
アフターピルを処方した際、医師から次回の受診日を指定されていると思うので、仮に出血があっても必ず受診しましょう。というのもその出血は月経によるものではなく、不正出血かもしれず、妊娠の可能性が十分に残っているからです。
そうだね。注意したいのは、「アフターピルを飲んだから、当分はゴムなしでエッチしても問題なくね?」とそのままで生でセックスをすることなんだ。これは絶対NGだよ。アフターピルで遅らせた排卵と、その後のセックスのタイミングがピッタリ重なってしまい、妊娠する可能性が高まってしまうんだ。
一番安全なのは、アフターピルを飲んだ翌日から低用量ピルを飲み始めること。最近の産婦人科では最初から両方を同時に処方するところも多いみたいだね。ただし、低用量ピルを組み合わせても最初の1週間前後は妊娠の可能性が残っているので、セックスは控えた方が無難だよ。
幸いにして月経が再来したら、コンドームなしの無防備なセックスは慎み、今後の避妊法を確認しましょう。既に低用量ピルを飲んでいるなら、今後も継続することが大切です。コンドームと異なり、低用量ピルによる避妊は男性パートナーの協力がなくても、女性が主導権をもって行えることです。ただし、性病予防の観点からみれば、コンドームの着用も欠かせません。
一番駄目なのは、アフターピルという「一発逆転」の避妊手段があるからと以前よりも大胆になって、無防備なセックスを繰り返すことです。アフターピルに頼る頻度が高くなると、そのたびに消退出血(女性ホルモンの分泌がな減少することで、子宮内膜が剥がれて起きる出血のこと)が起きるので、貧血など体調が崩れがちになります。