それって本当に「いつもの生理痛」ですか?20代・30代は病気が原因の可能性があります

 

芝村さん(患者):ええ、そうなんです。生理痛で初めて婦人科を受診したのが、大学に入学した頃でしたのでもう10年以上は生理痛に悩まされています。

当時受診した婦人科では、血液検査やエコー(超音波)検査をしたんですけど、『子宮や卵巣に何か原因となる病気は見つからなかったから、心配はいらない』って言われたんですよ。

10代に多い、子宮が未発達なために起こる生理痛じゃないかって。それ以来、我慢できないほどのつらい生理痛がきたときには、鎮痛薬のお世話になってきたんですけど、30歳を過ぎても変わらないのでどうしたものかと…。

 

雅治(クリニック院長):そうですね。一般的には、生理痛や生理不順といった生理に関するトラブルは、子宮の発育が未熟な若い女性に多く、生理周期が安定すると減少するとされているんですよ。

しかし、30代を過ぎても生理痛や生理不順に悩まされたり、更年期に差し掛かっても全く改善の兆候がないという女性も珍しくはないんです。

芝村さんのような生理痛の場合、「いつもの生理痛」と感じていても、実際は10代〜20代の頃の生理痛の原因と、30代〜40代の生理痛では原因が異なっているということがあるので注意が必要なんです。

若い頃に生理痛で婦人科で診察してもらったら、原因となる病気がない、いわゆる「機能性」の生理痛や月経困難症と診断されるケースが多いんですよ。

しかし、30代、40代になってもまだ生理痛があるようなら、仮に過去には「機能性」のものと診断されていても、現在は「子宮内膜症」や「子宮筋腫」などの病気が生理痛の原因となっている可能性があるんです。

だから芝村さんが今日婦人科にいらしたのは賢明な選択だったと思います。

 

そうなんですか。「子宮内膜症」や「子宮筋腫」ってテレビや雑誌で見聞きしたことがあるんですけど、実際どんな病気なんですか?なんだか不安になってきました…。

 

奈々(看護師):じゃあ「子宮内膜症」から説明させていただきますね。子宮内膜症は、子宮の内側にあって、妊娠時に胎児のベッドの役割をする子宮内膜に似た組織が、何らかの理由で骨盤内、卵巣、子宮の筋層内など、本来の場所以外で増殖してしまう病気なんです。重症度の差はあるものの、生理がある女性の5〜10%が経験するとされている病気なんです。

子宮内膜症は良性の病気ですので、閉経を迎えれば自然に治癒しますが、激しい生理痛や骨盤の痛み、不妊の原因にもなるので、日常生活に支障をきたすほど症状が重い場合は、痛み止めやホルモン剤などによる治療が必要となります。

また子宮内膜症の一つで、子宮内膜の組織が卵巣に入り込んで増殖してできる「チョコレート嚢胞」と呼ばれるものも注意が必要なんです。なんだか可愛らしい名前ですけど、生理時の血液が卵巣内に溜まって蓄積され、それが古くなって溶けたチョコレートのような状態になるから、この名称が付けられたんですよ。

チョコレート嚢胞はがん化する危険性があるので、婦人科で定期的に診てもらうことが大切です。

 

うん、そうだね。じゃあ「子宮筋腫」は僕が説明します。子宮筋腫は子宮を構成している平滑筋という筋肉にできる腫瘍のことで、40代の女性の3〜4人に1人の割合で見られるとされています。

子宮筋腫は主に良性で、悪性になる心配はほとんどなく、閉経を迎えると自然に小さくなっていきます。筋腫が大きい、不妊の原因になっている、生理痛、不正出血、便秘、頻尿などの症状が酷いといった場合は、治療が必要になります。

 

悪性化の心配は少ないってことを聞いてちょっと安心したんですけど、こういった病気が私が現在悩まされている生理痛の原因なのでしょうか?

 

それは検査をしてみないと判断できないんですよ。先ほど、若い頃は原因となる子宮や卵巣の病気がない「機能性」の生理痛や月経困難症が多いといったんですけど、30代の生理痛でもやっぱり「機能性」の生理痛だったということも少なくありません。

ここでポイントとなるのは、同じ「機能性」の生理痛であっても、痛みを発症するメカニズムが10代とそれ以降の年代では違うことがあるってことなんですね。

どちらかというと若い頃の生理痛は、子宮の発達が未熟なために起こる傾向があります。具体的には、10代の子宮は入り口が狭くて硬いため、経血を成人女性のようにスムーズに子宮外に排出することができないんですね。

そのため子宮の収縮力を強めて経血を押しだそうとする時に、強い痛みがやってくるんです。これが10代に多い生理痛の痛みのメカニズムです。

一方、生理が安定した20代や30代に多く見られる生理痛の原因として、「プロスタグランジン」と呼ばれるホルモンがが多量に分泌されることが挙げられます。

プロスタグランジンには、子宮を収縮させて出産を促す働きがあり、排卵後に受精せずに不要となった卵子を子宮から排出するために子宮を収縮させます。

このホルモンが過剰に分泌されると、子宮はギュッ!と収縮してしまうため、強い痛みが発生するんですね。お産の時に経験する陣痛は、このホルモンの働きによるものです。

プロスタグランジンは成熟した子宮内膜ほど多く含まれていますので、生理が安定する20代、30代になってつらい生理痛がある場合、プロスタグランジンの過剰が原因であることが多いんです。

 

排卵が無ければ、プロスタグランジンの分泌は抑制されることになるので、OC(低用量ピル)を服用することで生理痛を和らげたり、解消することができるんですよ。

ピルと聞くと「避妊薬」の印象が先行してしまいますが、それだけではなく生理痛の低減や子宮内膜症、子宮筋腫、月経前症候群(PMS)、大人ニキビ、多毛症などの治療にも効果を発揮する"万能選手"なんですよ。